SORA2が切り拓く動画生成AIの新時代       ~医療現場での可能性と課題を考える~

OpenAIの最新動画生成AI「SORA2」について、おーつか先生とアイさんが対談。リアルな動画生成技術の仕組みから医療現場での活用可能性まで解説。患者指導や手術デモへの期待と、ハルシネーションやディープフェイクリスクの課題を検討し、医療AI活用の未来を探る。
大塚 2025.10.15
誰でも

おーつか先生:アイさん、今週気になったAIのニュースはありますか?

アイさん:新しく出たSORA2っていう動画生成AIなんですけど、本当の人間が喋ってるみたいでび  っくりしました!

おーつか先生:見た?あの動画、やばいよね。

アイさん:見ました!特にインタビュー動画は本当にすごかったです。

OpenAI
@OpenAI
https://t.co/slDHXrQGso
2025/10/01 06:51
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SORA2とは?

おーつか先生:SORA2を知らない方はあまりいないと思いますが、簡単に説明しますね。SORA2はOpenAI社が開発した動画生成AIです。以前からあったSORAのアップデート版で、現在はまだ使える人が限られています。ちなみにアイさんは今使えてるのかな?

アイさん:ちょっと招待コードがなくて、使えてない状態です……。

おーつか先生:そうそう、だから誰かが招待してくれないとまだ使えないんですよね。時々SORA2の招待コードがXで公開されてて。

アイさん:へぇー。

おーつか先生:先着順みたいなやつで公開されてるの。「SORA2 招待コード」でXを定期的に検索しておくと、誰かが教えてくれるかもしれない。

アイさん:通知オンにしとかないといけないですね!

おーつか先生:そう、オンにしとかないと使えるようにならない。

 著作権問題とオプトアウト方式

おーつか先生:これ、著作権の問題で日本のアニメをみんながいっぱい生成して問題になったの知ってる?

アイさん:なんかニュースで見た事あります。

おーつか先生:見た?ドラゴンボールとか有名なアニメがもうリアルに作れちゃって、しかも著作権に関してはオプトアウト形式にしてたのよ。オプトアウト形式分かる?

アイさん:分かります……えぇ、でも言葉にするの難しい……。

おーつか先生:よく僕らが使う倫理委員会の処理とかはオプトイン形式とオプトアウト形式があってね。オプトインは「この計画に賛成してくれるならサインしてください。同意したら治験に入ります」っていうのがオプトイン。オプトアウトは「この研究に対して、もし反対ならば表明してください。抜け出せます」っていうのがオプトアウト形式。

今回SORA2がオプトアウト形式をとったのは、「自分たちが普段使っているアニメの動画を誰かユーザーが使って、それが嫌だったら表明してください」というものでした。無限にたくさん出てくるアニメーションを一つ一つオプトアウトしなきゃいけないというのが大問題になって、結局OpenAI社はそれを取り下げたんです。著作権に関しては、ちょっと守られたというか、今のところ落ち着いている状態になっています。

ただ、これ自分のフェイク動画とか作られたら困るよね。

アイさん:そうですね。どれが本物なのかが全く見分けがつかないから、それがちょっと怖いなとは思います。

おーつか先生:確かにね。

ChatGPTにて制作

ChatGPTにて制作

医療現場での可能性と課題

おーつか先生:実際、これ医療の現場でどういう風な影響があるかというのをアイさんは考えたことある?

アイさん:使いどころっていう面では、患者さんにお薬の塗り方とかで使ったら分かりやすいのかなという印象はあるんですけど、他にどういう使い方があるのか先生にお伺いしようと思ってました。

おーつか先生:これね、実際いろんな人が動画を作っているんですけど、やっぱり「ハルシネーション」が入ってくるんですよ。ハルシネーション、つまり幻覚、間違いが入ってくるんで、正確に本当に描写できるかというとちょっと問題がまだ残っています。

なので、お薬の塗り方を指導するとなった時に、大雑把に見れば合っているけれど、ちゃんとフィンガーチップユニット(適切な軟膏の量)ができているかとか、そこはまだ難しいかなと思ってて。患者指導に使えるようになるには、まだSORA2は不十分かなという印象です。実際の医療で使うようになるには、もう少し正確な医学情報がちゃんと反映されないと厳しいかなという印象。

ただ、例えば我々大学病院の医局だと、新しい入局員の勧誘とか、動画を作らなきゃいけないとか、そういう時にこんなのを使っていろいろ宣伝したりとか、あとクリニックの先生とかはこういうのを使って各クリニックの宣伝に使えるかもしれない。

でもどうなんだろうね、AIが作った動画を流す医局に入りたいと思うかどうか。

アイさん:うちの医局はAIやってます!って言ってるので、「こんなこともできるよ」っていうのは宣伝にはならないですかね?

おーつか先生:AIってあらかじめアナウンスしておけばいいかもしれないけど、「AIかよ」って騙されたみたいなのが結構あるので、それとかは注意が必要かもしれないですね。でも動画は面白いよね。

アイさん:これを見ると無限大の可能性を感じますね。

おーつか先生:今後はこういうのがうまく発展していくと、実際に手術のデモ動画とか、我々の領域だと皮弁とか、難しい郭清で「この神経切っちゃいけない」とかあるじゃないですか。そういうのが生成されて事前に学習できるとか、そういうのに繋がるかもしれないね。

アイさん:それは本当に期待したいですね!

【深掘りコラム①】SORA2の仕組みを理解する~Diffusion Modelって何?~

動画生成AIがここまでリアルな映像を作れるのは、「Diffusion Model(拡散モデル)」という技術のおかげです。少し技術的な話になりますが、医療現場で使う上で知っておくと役立つので、簡単に解説します。

 ノイズから映像を生成する魔法

Diffusion Modelは、「ノイズだらけの画像から徐々にノイズを取り除いて、きれいな画像を生成する」という逆転の発想から生まれました。例えるなら、霧がかった写真から徐々に霧を晴らしていくようなイメージです。

1. 学習段階:大量の動画データに、少しずつノイズを加えていく過程を学習

2. 生成段階:完全なノイズから始めて、学習した知識を使ってノイズを取り除き、動画を生成

 テキストとの連携が鍵

SORA2が優れているのは、このDiffusion Modelと「言語理解AI」を組み合わせている点です。「白衣を着た医師が患者に薬の塗り方を説明している」というテキストプロンプトを入力すると:

1. 言語AIがテキストを理解し、映像の「設計図」を作成

2. Diffusion Modelがその設計図に基づいて、ノイズから動画を生成

3. 時間的な整合性(動きの連続性)も考慮しながら、フレームごとに生成

 なぜハルシネーションが起こるのか?

ここで問題になるのが「ハルシネーション」です。AIは学習データから「それらしい」映像を生成しますが、医学的な正確性まではチェックしていません。例えば:

- フィンガーチップユニットの量が不正確

- 塗る方向や手技が間違っている

- 解剖学的に不自然な動き

これらは「見た目はそれっぽい」けれど「医学的には間違い」という状態です。だからこそ、医療現場での利用には専門家の確認が必須なのです。

 今後の発展に期待

ただし、技術は急速に進化しています。将来的には:

- 医学データベースと連携した「医療特化型」動画生成AI

- 解剖学的な制約を理解した生成モデル

- 生成された動画の医学的正確性を自動チェックする機能

これらが実現すれば、医療教育での活用が一気に進む可能性があります。

 まとめ

おーつか先生:というわけで、今日はSORA2を紹介しましたが、技術の仕組みを理解すると、なぜハルシネーションが起こるのか、なぜ医療現場での利用に注意が必要なのかが分かりますね。

アイさん:技術的な背景を知ると、より適切に使えそうです!

おーつか先生:そうそう。次は、もう一つ重要な話題、ディープフェイク対策について深掘りしていきましょう。

【深掘りコラム②】医療現場でのディープフェイク対策~今からできる3つのこと~

SORA2のような高精度な動画生成AIの登場で、「ディープフェイク」のリスクが医療現場にも迫っています。特に医師や医療機関にとって、偽の動画が拡散されるリスクは深刻です。

 リスク①:偽の医療情報の拡散

想定されるシナリオ

- 有名な医師が「○○という治療法が効果的」と語る偽動画

- 実在しない医師が「新薬の臨床試験結果」を発表する動画

- クリニックの悪評を広めるための偽の患者インタビュー

これらは患者さんの健康被害や、医療機関の信用失墜につながります。

 リスク②:なりすまし詐欺

- オンライン診療での医師のなりすまし

- 医療機関の公式動画を装った詐欺

- 製薬会社の偽の広告動画

 今からできる対策①:公式動画の真正性証明

デジタル署名の活用

- 公式に発信する動画には、必ずデジタル署名や認証マークを付ける

- ウェブサイトやSNSで公式動画の一覧を公開

- 「この動画は公式です」と明示する仕組みを作る

具体例

【公式】○○クリニック - 院長からのメッセージ

✓ 公式認証済み(2025年1月15日)

動画ID: ABC123XYZ

 今からできる対策②:スタッフ教育

医療機関のスタッフ全員に以下を周知:

1. 疑わしい動画を見たら報告する

2. SNSで発信する前に確認する(勝手に動画を公開しない)

3. 患者さんから「先生がこんなこと言ってた」と言われたら確認する

 今からできる対策③:患者さんへの啓発

待合室のポスターやウェブサイトで:

- 「公式動画はこちらのチャンネルのみです」

- 「不審な動画を見つけたらご連絡ください」

- 「オンライン診療では必ず本人確認をします」

 ディープフェイク検出ツールの活用

現在、いくつかのディープフェイク検出ツールが開発されています:

- Microsoft Video Authenticator:動画の改ざんを検出

- Intel FakeCatcher:リアルタイムでディープフェイクを検出

- Sensity AI:ディープフェイク監視サービス

これらのツールを活用して、定期的に自分や自院の名前で検索し、偽動画がないかチェックすることも重要です。

 もし偽動画が拡散されたら

1. すぐに公式声明を出す(「この動画は偽物です」)

2. プラットフォーム(YouTube、Xなど)に削除申請

3. 必要に応じて法的措置を検討

4. 患者さんへの直接説明(診察時に口頭で説明)

ディープフェイク対策は「起こってから対応する」のではなく、「今から備える」ことが重要です。

最後に

おーつか先生:今日はSORA2について、基本的な使い方から技術的な仕組み、そして医療現場でのリスク対策まで、かなり深く掘り下げましたね。

アイさん:はい!動画生成AIの可能性と同時に、注意すべき点もよく分かりました。でも、やっぱり招待コード、早く手に入れて使いこなせるようになりたいです!

おーつか先生:招待コード誰か持っている人、アイさんに送ってあげてください(笑)。技術は日々進化していますが、医療現場で使う以上、常に「正確性」と「倫理性」を忘れずに。それではまた来週!

アイさん:ではまた来週!

編集後記

SORA2のような動画生成AIは、医療現場での教育や宣伝活動に新たな可能性を開きますが、ハルシネーション(誤情報生成)の問題や著作権・倫理面での課題も多く残されています。技術の進歩を期待しつつ、慎重に活用していく必要がありそうです。

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